映画業界調査

〇目録

1.はじめに
2.映画業界の歴史
3.映画業界の現状
4.映画業界の将来性
5.おわりに

 

1.はじめに

誰もが映画館で、テレビ放送で、ネットで気軽に映画を見ることができる現代。映画鑑賞を趣味として楽しむ人も多い。毎年様々な作品が登場し、私たちに感動を与えてくれる映画。長きに渡る低迷期を乗り越えた映画業界はどのように変遷していくのだろうか。

ここでは映画業界の歴史や現状及び将来性について述べる。

 

2.映画業界の歴史

1950年代中葉から後半にかけて、作品の量、入場者数、映画館数など様々な指標から映画業界は黄金期を迎えた。戦後復興を経て新たに成長軌道に乗り始めた日本経済の中で、人々にとって身近で安価な娯楽対象としての映画の存在は圧倒的なものであり、当時7,000館を超える映画館数、11億人の入場者数を記録した。しかし、娯楽の多様化やレンタル市場の成長などの影響によって映画業界は1960年以降長期にわたって低迷することとなる。7,000館を超えていた映画館数は1990年代前半には1,700館まで減少し、入場者数も1億2,000万人にまで落ち込んだ。

しかし、1990年代に1つの施設に複数のスクリーンを有するシネマコンプレックス(シネコン)が登場したことで映画業界に復調の兆しが訪れた。シネコンの普及により映画の公開本数が増え、1億2,000人前後で推移していた入場者数が2000年代には1億6,000万人以上にまで回復することとなる。

 

※一般社団法人日本映画製作者連盟調べ

 

3.映画業界の現状

シネコンの普及やデジタル化による映画上映の多様化によって日本の映画界は好調傾向にあると言えるだろう。入場者数は上昇傾向にあり、それに伴い興行収入は2016年には2,350億円を超えるなど、戦後で最大のピークを迎えている。また、映画館数も増加傾向にあり、2017年には3,500館を超えている。しかしその中の9割程度をシネコンが占めており、ミニシアターの閉鎖は続いているのは映画業界の一つの課題と言える。

映画上映の多様化に関しては、映像が立体的に見える3次元(3D)映画が代表的である。ハリウッドの3D映画の大作が登場した2009年以降、入場者数と客単価の増加を狙う映画館の3D対応が急速に進んだ。これは通常の映画よりも料金を高めに設定できるからである。3D上映を実現したのがデジタル化である。かつてのフィルム上映に代わってデジタル上映が主流になり、映画館の可能性が大きく広がったのだ。最近では、映画の場面に合わせて座席が前後や上下、左右に動くほか、劇場内に風や香り、水しぶきなどを出す演出により、映画の世界を体感できる体験型劇場システムも話題になっている。

また、映像メディアの多様化に伴い、映画コンテンツを様々なメディアで「二次利用」していくことが映画業界の常識となっている。近年では映画は映画館で上映したあと、DVD/ブルーレイの販売やレンタル、テレビ放映・配信といった形で二次利用されている。更に、販売や配信などの二次利用の流れも変化しつつある。というのも、従来のように映画館で上映した後に二次利用として配信の選択肢があるという枠組みではなく、配信の後に映画館での上映、もしくは映画館で上映した直後に配信する流れが生まれているのだ。

 

4.映画業界の将来性

今後もシネコンの拡大、デジタル化による映画上映の多様化は続き、映画業界の好調は続くだろう。一方で、ミニシアターの閉鎖により若手映画監督が作品を上映する環境が減っているため、作品を生み出す次世代が育ちにくいことが考えられる。

また、二次利用の流れの変化、つまり配信と映画館の差が縮まっていくことで、映画ビジネスそのものに大きな変化が生まれるだろう。動画配信の手軽さ・便利さは現代では欠かせないものとなっており、映画にもそれを求める消費者が増えてきている。かつてのように映画館に足を運んで見るのが一般的であった映画が、配信によって手軽に家で見ることができるものに変わりつつある。今後は映画本来の在り方を見直し、ビジネスの転換を図っていくことが必要になっていくだろう。

 

5.おわりに

数十年に渡る低迷期を乗り越えた映画業界は今もなお人々に愛され続ける映画を世に送り出している。その背景にはシネコンの普及やデジタル技術の進歩があり、今後も新たな価値を生み出していくだろう。

一方で二次利用の流れの変化により映画館離れが進むことも考えられる。その中で映画本来の在り方を見直しながら、映画ビジネスは変化を迫られるであろう。

 

投稿者:嘉田紗世/京都大学

関連記事

  1. 整骨院のイメージ

    整骨院業界の現状の動向と今後について

  2. 名刺の扱い方ハウツー

  3. 広告代理店について

  4. ラジオ業界について

  5. 保険のイメージ

    保険について

  6. 紀州備長炭は世界一 広がる炭産業

  7. アニメ制作のイメージ

    アニメ制作会社について

  8. 新聞業界について

  9. ビジネスにおける言葉のマナー